今につながる日本史+α

今につながる日本史+α

読売新聞編集委員  丸山淳一

明治以降

近代最初と最後の詔が示す戦前の神話国家

終戦から78年が経過した。一般的な日本の時代区分では、明治維新から終戦の日までは「近代」、その後は「現代」に分けられる。3年8か月の「戦中」を加えた「戦前」は77年だから、今年で「戦後=現代」は「戦前=近代」より長くなった。 『戦前の正体』の帯…

サザン『盆ギリ恋歌』の歌詞にみる「お盆」と「反体制」の考察

デビュー45周年を迎えたサザンオールスターズが、45周年を記念した三部作の配信を始めた。7月17日にリリースされたのがその第一弾が『盆ギリ恋歌』だ。 サザンならでは?「攻めた歌詞」 歌詞が参考にしているのは『五木の子守唄』 故郷のエネルギーを示す歌 …

小栗忠順が東京湾に残した「志」の遺産

NHK大河ドラマ「青天を衝つけ」で、もう少し長く見たかった人物がいる。東征軍(後の新政府軍)との徹底抗戦を唱えて 罷免ひめんされ、領地だった上州権田村(現在の群馬県高崎市)で理不尽に殺害された 小栗おぐり上野介こうずけのすけ忠順ただまさ(1827~…

牧野富太郎を顕彰するのに不可欠な視点とは

自宅書斎での富太郎(国立国会図書館蔵) NHK連続テレビ小説『らんまん』で神木隆之介さんが演じる主人公の槙野万太郎のモデルは、日本を代表する植物学者、牧野富太郎(1862~1957)だ。貧困にあえぎつつ、ひたむきに研究を続けた植物学者のことは、ご存じ…

熊本地震から7年 邸宅再建、ジェーンズってどんな人?

平成28年(2016年)4月に発生した熊本地震から間もなく7年が経つ。熊本のテレビ局に赴任して地震に遭遇した筆者は、4月14日(前震)と16日(本震)の揺れをまだ体で覚えている。 再建されたジェーンズ邸。内部展示を整備し、2023年9月に一般公開の予定(熊…

130年前の海難から続く日本とトルコの絆

トルコ南部で2月6日に起きた大地震で、トルコと隣国シリアの死者があわせて5万人を超えた。死者数が1万人を超える地震は、東日本大震災以来だという。 亡くなられた方々に弔意を表し、被災された方々にお見舞い申し上げたい。地震を機に、日本とトルコの…

プロ野球界の「記録の神様」山内以九士の大きな功績

日本に野球が伝来して150年となる2022年、節目の年を祝うかのように、野球界で大記録が次々に誕生した。 記録があるから偉業が分かる プロ野球については昭和11年(1936年)以降のすべての試合、すべての打席、すべての投球や守備が完璧に記録されている。こ…

鉄道150年 大隈重信「一生の不覚」のその後

新橋―横浜間に日本で初めて鉄道が走ってから150年になる。文明開化の象徴にもなった鉄道建設に貢献したのは大隈重信(1838~1922)、伊藤博文(1841~1909)、井上勝まさる(1843~1910)の3人だ。 若き日の大隈(国立国会図書館蔵) 日本の鉄道史には、ペリ…

安倍元首相国葬で菅氏の弔辞に引用された『山県有朋』

安倍元首相の国葬(国葬儀)で多くの人の心を打ったのは、菅義偉前首相の弔辞だった。弔辞を読み終えた菅氏に対しては、自然に拍手がわいた。葬儀会場で弔辞に拍手がわくのは異例のことだという。 安倍元首相の国葬儀(首相官邸ホームページより) 衆議院第1…

関東大震災から99年 知るべき教訓とは 

10万人を超える犠牲者を出した大正12年(1923年)9月1日の関東大震災から99年。この震災では特に隅田川東側の江東地区、当時の本所区(現在の墨田区南部)と深川区(江東区北西部)の被害が大きく、両区での焼死者はあわせて5万人を超えた。このうち3万8…

コロナ禍3年目の夏に考える「お盆」の意義

新型コロナウイルスの感染拡大「第7波」が勢いを増す中で、日本最大の民族大移動の時期「お盆」の週がやって来た。今年は行動制限のない久しぶりの夏。東北では大雨被害が心配されたが、3年ぶりの「三大祭り」が始まった。 読売新聞オンラインのコラム本文…

安倍元首相の殺害を過去6人の宰相殺害から考える

奈良県で参院選の街頭演説中だった安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。憲政史上最長の在任記録を持ち、首相退任後も自民党最大派閥の領袖りょうしゅうだった政界の中心人物が、選挙期間中に銃殺された衝撃は大きい。 銃撃したのは奈良市に住む無職、山上徹也容疑…

選挙の後に不要論…参議院はなぜ必要とされたのか

参議院議員選挙は、当初の予想通り与党の大勝という結果となった。選挙戦の終盤戦で安倍元首相が狙撃され死亡するという予期せぬ事件が起きたが、選挙結果には大きな影響を与えなかったようだ。 当選した議員の顔ぶれを見て、SNSには「参議院不要論」を説く…

国宝指定の熊本・通潤橋 官民協力で造った日本一の石橋

完全復旧した通潤橋 熊本県山都町やまとちょうにある日本最大級の水路石橋、通潤橋つうじゅんきょうが“国宝に指定される見通しとなった。 通潤橋は2016年の熊本地震で通水管が破損し、2年後の豪雨で石垣の一部が崩落し、20年7月に復旧した。安全上の問題か…

『青天を衝け』時代考証者が語る 渋沢栄一と維新功労者の実像

主人公の渋沢栄一を吉沢亮さんが演じたNHK大河ドラマ「青天を衝つけ」が、12月26日放送の第41話で最終回を迎える。500社もの会社を設立し、600にのぼる公共事業を進めた渋沢は「近代日本資本主義の父」として知られていたが、天保から昭和まで11の年号を…

もう少し時間があれば…明治の偉人に絶賛された小栗忠順

NHK大河ドラマ「青天を衝つけ」で、もう少し長く見たかった人物がいる。東征軍(後の新政府軍)との徹底抗戦を唱えて 罷免ひめんされ、領地だった上州権田村(現在の群馬県高崎市)で理不尽に殺害された 小栗おぐり上野介こうずけのすけ忠順ただまさ(1827~…

ジャパンブルーはサムライブルーか

2021年に発売されたサッカー日本代表 100周年アニバーサリーユニフォーム 大河ドラマ「青天を衝け」で藍染めが出てくることから、ジャパンブルーの歴史を探ってみた。 読売新聞オンラインのコラム本文 武士の「勝ち色」由来説には異説も サッカー日本代表の…

感染症にかかった為政者はどう動いたか

コロナ禍が一向に収まらない。菅首相は7月末までに高齢者のワクチン接種を終わらせる方針だが、ワクチン供給の遅れや予約システムの不備などの不手際が相次ぎ、内閣支持率は低迷が続いている。 国会議員がパーティーを開いたり、夜の会合に出席したりした事…

謎だらけ 聖徳太子の肖像画

2021年は聖徳太子(厩戸皇子うまやどのおうじ、574~622)の1400回忌にあたる。奈良の世界遺産・法隆寺では4月3日から5日まで、100年に1度の節目となる遠忌おんき法要が行われた。 聖徳太子はひと昔前まで、間違いなく日本で最も有名な歴史上の人物だっ…

天守閣復旧の熊本城 復旧はこれからが正念場

2016年の熊本地震で傷んだ熊本城天守閣の復旧工事が完了した。5年前に熊本地震に遭遇した筆者にはうれしいニュースだ。だが、復旧工事が完了したのは天守閣と重要文化財の長塀ながべいだけで、熊本城全体の復旧はまだ2割程度しか終わっていないとされる。 …

『青天を衝け』渋沢栄一のすごさを知る三つのポイント

「日本近代資本主義の父」といわれる渋沢栄一(1840~1931)を吉沢亮さんが演じるNHK大河ドラマ『青天を衝け』が始まった。渋沢は3年後には福沢諭吉(1835~1901)に代わって1万円札の顔になる。 波乱万丈の人生は、大河ドラマの主人公にふさわしい。天…

学術会議問題と寛政異学の禁と滝川事件

日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人を菅首相が任命しなかった一件が、尾を引いている。為政者による弾圧と抵抗は歴史にはつきもので、今回の任命拒否も学問の自由との関係が議論されている。 だが、今回の一件を現時点で学問の自由の侵害=違憲とい…

平家の落人集落発見?100年前の国勢調査

国勢調査が大正9年(1920年)の第1回調査以来、100 年の節目を迎えた。10月7日に回答期限を迎えた今回の調査は新型コロナの影響でインターネットによる回答が推奨されたが、回答率が低く、回答期限が20日まで延期された。 回答しない世帯には調査員が訪れ…

「半沢直樹」と白洲次郎に共通する「プリンシプル」

堺雅人さん主演のTBS系日曜劇場「半沢直樹」が終了した。最終回の世帯平均視聴率は32.7%と、令和になって最高を記録したという。「半沢ロス」に陥りながら書いたコラム本文は、ちょっと独りよがりかも知れない。SNS上には結構同じ意見があって、ちょっと…

「暴れ川」「ダム」の歴史と令和の熊本豪雨

決壊した球磨川と浸水した人吉市街 梅雨前線の影響で熊本県南部に記録的な大雨が降り、球磨川が氾濫した。支流に近い球磨村の特別養護老人ホームが浸水し、土砂崩れも多発した。 八代市や人吉市では橋が流失し、多くの人が孤立した。死者・行方不明者は30人…

造船疑獄の指揮権発動は「政治史最大の汚点」なのか

「法務大臣は、……検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる」「但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみすることができる」 「法相の指揮権発動」に関する検察庁法14条の本文と但書きだ。個々の事件について法相は検察官…

『アルキメデスの大戦』に盛り込まれた史実が示す教訓とは

*「今につながる日本史」の出版にあわせて、本の中身を確認できるように、このコラムは本に収録した加筆修正後の内容に改めました。 護衛艦「いずも」(海上自衛隊ホームページより) 政府は2018年12月に閣議決定した新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画(2…

「Fukushima50」を観て考える「10M」と「400年」

東日本大震災から9年が経過した。福島県双葉町と大熊町にまたがる東京電力福島第一原子力発電所(イチエフ)で起きた事故と、迫りくる「チェルノブイリ×10」の危機と闘った吉田昌郎まさお(1955~2013)所長らの姿を克明に描いた映画「Fukushima50」が公開…

2020東京五輪1年延期、1940年「返上」との違い

大河ドラマ「いだてん」の脚本家、宮藤官九郎さんが新型コロナウイルスに感染したという。志村けんさんが亡くなったことも、多くの人に衝撃を与えた。家族や知人が感染したり、外出自粛で生活がままならなくなっている方が増えているのではないか。心からお…

100年前のパンデミック再来か コロナ猖獗極める

コロナウイルスのパンデミックが止まらない。流行の中心は中国から欧米に移り、奥州はイタリア、フランス、スペインを中心に国ごとほぼ閉鎖という状況になっている。日本でも感染者も中国からの帰還者より欧州からの帰還者が目立つようになってきた。 読売新…