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読売新聞編集委員  丸山淳一

「麒麟がくる」帰蝶の再婚相手となり天下が獲れた信長

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清洲城公園に建つ帰蝶の像

 いつもの年なら始まっている大河ドラマが始まらない。「麒麟がくる」で織田信長の妻、帰蝶濃姫、1535〜?)を演じる予定だった沢尻エリカ被告が違法薬物所持で逮捕、起訴され、急きょ川口春奈さんに差し替えて撮り直しをしているためだ。

 急きょ「帰蝶」を演じることになった(初回から出演するのだから本来は代役と呼ぶのはおかしい)川口さんへのエールも込めて、帰蝶についてまとめてみた。

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撮り直しは重要な役の証

 帰蝶がドラマ初回から登場するということは、重要な役回りである証だろう。実は斎藤道三(1494〜1556)と織田信長(1534〜82)を主人公に描いた大河ドラマ国盗り物語』も、司馬遼太郎の原作とは異なり、初回の冒頭のシーンが帰蝶の輿入れから始まっている。

  麒麟がくる」もすでに沢尻エリカ被告の収録が進んでいたからこそ、撮り直しによって初回の放送が1月下旬までずれ込んでしまったのだろう。 

 大河ドラマは2019年の「いだてん」も出演者の薬物汚染で苦労している。「作品に罪はない」というのはその通りだと思うが、沢尻被告の降板は初回放送前に決まったことだ。途中で重要な配役が代わるという違和感をなくすため、初回を遅らせて撮り直すというのは適切な対応だったのではないか。

謎だらけ、でも大きな役割

 帰蝶の生涯は謎だらけだが、織田信長明智光秀を結びつけるという歴史を変える重要な役割を果たした女性だ。血縁関係については諸説があるが、光秀は「帰蝶が信長に嫁いだ縁で織田家に仕えることにした」と語っていた記録がある。何らかの関係があったのは間違いないだろう。

 ドラマの中で帰蝶は美濃(岐阜県)の守護、土岐頼純に嫁いでおり、父の斎藤道三に夫を毒殺されて信長に嫁いだ「バツ1婚」ということになる。

 しかし、コラム本文で書いた通り、この帰蝶の再婚がなければ信長が尾張を統一できたかどうかわからず、光秀が信長に仕官したかどうかわからず、したがって足利義昭が信長のもとにころがり込んできたかどうかわからず、天下の行方は大きく変わっていたかもしれない。

 もっとも、それを言うなら帰蝶がいなければ本能寺の変もなかったことになる。本能寺の変は信長、帰蝶、光秀の三角関係のもつれで起きたという「濃姫黒幕説」すらある。帰蝶がいつまで生きたかもわからない中ではトンデモ説に過ぎないが、歴史の転換点に黒幕説がつくれるほど帰蝶の存在は大きかったといえる。 

川口春奈帰蝶は活動的で男勝り?

 生涯は謎だらけということで、過去の大河ドラマでの帰蝶像(濃姫)も、実にさまざまに描かれている。

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 過去には何人も帰蝶を演じているが、私が大好きなのは『国盗り物語』で松坂慶子さんが演じた帰蝶濃姫)だ。この時は当初は信長が藤岡弘さん、帰蝶浅丘ルリ子さんが演じる予定だったが、藤岡さんが「仮面ライダー」の収録が忙しくて高橋秀樹さんに代わり、松坂さんが急きょ抜擢されたという話がある。

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  せっかく初回から撮り直したのだから、川口さんは「沢尻被告ならどう演じたか」とは考えず、独自の帰蝶像を示してもらいたいものだ。

 

 

maruyomi.hatenablog.com

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