今につながる日本史+α

今につながる日本史+α

読売新聞編集委員  丸山淳一

安土桃山時代

「神君伊賀越え」は大和経由? 甲賀・伊賀越えの可能性も

天正10年(1582年)6月2日の本能寺の変で織田信長(1534~82)が明智光秀(?~1582)の謀反で命を落とす。信長の招きで安土、京、堺を訪れていた徳川家康(1542~1616)は、命をかけた逃避行で領国の三河(愛知県)へと逃げ帰る。三河一向一揆、三方ヶ原…

天下の大名物「千鳥の香炉」の数奇な来歴

大人買いしている「戦国の茶器」 トイズキャビンのカプセルトイ「戦国の茶器」の大人買いを続けていたら、本棚の一角が変の直前の本能寺みたいなことになってきた。蘭奢待らんじゃたい、三足みつあしノ蛙、平蜘蛛の釜、黄金の茶窯などがそろった。それぞれ深…

三英傑「ホトトギスの歌」を詠んだのは誰か

読売カルチャーセンター錦糸町で「徳川家康はなぜ最後に天下人になれたのか」という題で公開講座を開き、「戦国の三英傑」について話した。織田信長(1534~82)、豊臣秀吉(1537~98)、徳川家康(1542~1616)の性格の違いを話した際に、有名な「ホトトギ…

『レジェンド&バタフライ』が描く日本一有名な政略結婚

東映創立70周年記念作品『レジェンド&バタフライ』が全国公開された。天文18年(1549年)に政略結婚で夫婦となった2人が、天正10年(1582年)の本能寺の変まで、乱世を駆け抜けた33年間を描く。織田信長(1534~82)を木村拓哉さん、正室の帰蝶きちょう(…

『どうする家康』の家康像、どうする?

でっぷり太った典型的な徳川家康像 戦国の世を終わらせた徳川家康(1542~1616)を松本潤さんが演じるNHK大河ドラマ『どうする家康』の放送が始まった。前作の『鎌倉殿の13人』は毎週誰かが誅殺されることから「死ぬどんどん」の異名がついたが、作者の古沢…

「光秀は本能寺にいなかった」新説の講演を聞く

天正10年(1582年)6月2日、明智光秀(?~1582)が主君の織田信長(1534~82)を討った本能寺の変について、金沢市立玉川図書館近世史料館が所蔵する『 乙夜之書物いつやのかきもの』という書物から、これまでの常識を覆す記述が見つかった。この記述…

願望、幻想をのみ込む魅力…天下取りの名刀「義元左文字」

刀剣ブームが続いている。熊本のテレビ局に赴任していた時、阿蘇神社に伝わる幻の宝刀「 蛍丸ほたるまる」の復元プロジェクトを取材して、そのすごい人気に驚いた。オンラインゲーム『刀剣乱舞』に登場する刀を擬人化したキャラクターのファンになり、刀その…

天守閣復旧の熊本城 復旧はこれからが正念場

2016年の熊本地震で傷んだ熊本城天守閣の復旧工事が完了した。5年前に熊本地震に遭遇した筆者にはうれしいニュースだ。だが、復旧工事が完了したのは天守閣と重要文化財の長塀ながべいだけで、熊本城全体の復旧はまだ2割程度しか終わっていないとされる。 …

『麒麟がくる』本能寺の変の今の学説は?

大河ドラマ『麒麟がくる』が完結した。天正10年(1582年)6月2日、明智光秀(?~1582)が主君の織田信長(1534~82)を襲ったこのクーデターは、光秀の動機を巡る論争が続き、「戦国最大のミステリー」と言われる。 読売新聞オンラインのコラム本文 ↑読売…

『麒麟がくる』本能寺のトリガーは家康?は大外れだったが…

織田信長 『麒麟がくる』最終回の本能寺の変については、ドラマの結末を見てからもう一度書く、と前回のコラムに記したが、公表された最終回の粗筋を読んで言っておきたいことができた。本能寺のトリガーは家康暗殺指令になる恐れがあるが、それはないと思う…

信長の蘭奢待切り取りの真相は

大河ドラマ『麒麟がくる』(12月20日放送)で、織田信長(1534〜82)が、奈良東大寺の正倉院宝物の中でも特に有名な伽羅きゃら「黄熟香おうじゅくこう」を切り取る。文字の中に「東」「大」「寺」の名を隠した「蘭奢待らんじゃたい」の別名のほうが知られる天…

安土城天主も江戸城天守も再建できないワケ

織田信長(1534〜82)の安土城(国の特別名勝)の天主復元を検討してきた滋賀県の三日月知事が建物の復元を見送る方針を明らかにした。デジタル技術を用いた「再現」となる見通しだ。詳しい史料がなく、現時点では史実に忠実に復元することが難しいためだ。 …

「麒麟がくる」に反映された「洛中洛外図屏風」の謎解き

京都市中(洛中)と郊外(洛外)のパノラマ景観を描いた洛中らくちゅう洛外図らくがいず屏風びょうぶの中でも最高傑作とされる「上杉本」(国宝、米沢市上杉博物館所蔵)が、上野の東京国立博物館で開催中の特別展「桃山―天下人の100年」に出品されている。 …

施しから棒引きへ…徳政史の変遷と令和コロナ徳政

新型コロナ感染拡大を受け、国や自治体が中小企業支援策の拡充に踏み切っている。ただ、営業時間の再短縮や休業(自粛)を求められた店の多くからは「月で最大20万円程度の協力金では足りない」という声が出ている。 倒産や廃業を食い止めるための思い切った…

信長も考えた?足利16代将軍・義尋の誕生

乱世は後継者が次々と権力を奪う時代だ。当然、前任者の子孫はその地位を失う。だが、後継者は前任者と敵対していたわけではない。権力の簒奪さんだつには手順が必要になる。 豊臣秀吉(1537〜98)は織田信長(1534〜82)の孫の三法師、のちの織田秀信(1580…

大発見!秀吉最後の城で関ヶ原の勝敗が決まった?

豊臣秀吉(1537~98)が最晩年に築いた「京都新城」の石垣や金箔きんぱく瓦が、京都仙洞せんとう御所(京都市)内で見つかった。築城から30年ほどで解体され、どこにあったかすらはっきりしていなかった秀吉最後の城の遺構が、初めて京都御所内で確認された…

外出自粛でも楽しめる?安土城 3つの謎

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国に緊急事態宣言が出され、今年のゴールデンウイークはどこにも行かずにSTAY HOMEという人が多かっただろう。 外出を自粛してみると、自由に外出できるというのはいいことだったのだなあと思う。外出して見ることが…

朝廷に法を守らせた信長と検察定年延長問題

検察官の定年を延長する検察庁法改正案について、SNS上で抗議の声が上がっている。検察OBが反対の意見書を出すのは異例といえる。 政府は法案提出以前に黒川弘務高検検事長の定年延長を法律の解釈変更という閣議決定で強行している。法案はこの決定を「後付…

人気の『流人道中記』に仕込まれた史実と幕末の空気

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が、「特定警戒」に指定した茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県を含む39県で解除される。 だが、北海道、東京、神奈川、千葉、埼玉、京都、大阪、兵庫の8都道府県では緊急事態が維持される。解除される34…

信長も認めた?蘭の効用 ひと鉢に込められた歴史と愛情

2020年2月14日から東京ドームで「世界らん展2020」が始まった。今年は30周年ということで特別展示もある。 蘭栽培にも深くて長い歴史がある。今回は日本人4人、福羽逸人(1856〜1921)、大隈重信(1838〜1922)、島津忠重(1886〜1968)、岩崎俊彌(1881〜19…

「麒麟がくる」帰蝶の再婚相手となり天下が獲れた信長

清洲城公園に建つ帰蝶の像 いつもの年なら始まっている大河ドラマが始まらない。「麒麟がくる」で織田信長の妻、帰蝶(濃姫、1535〜?)を演じる予定だった沢尻エリカ被告が違法薬物所持で逮捕、起訴され、急きょ川口春奈さんに差し替えて撮り直しをしている…

明智光秀の記録残した吉田兼見日記と「桜を見る会」問題

安倍首相に対する「桜を見る会」についての批判が収まらない。公文書を恣意的に棄てたり、百歩、いや1万歩譲って恣意的でないとしても、ずさんにシュレッダーしてしまったりすることがいかに問題か、安土桃山時代の公家、吉田兼見(1535〜1610)の2冊の日…

韓国観艦式で消えた旭日旗の代わりに掲げられた2つの旗

親日派の「積弊清算」に目を向ける韓国・文在寅の罪については、前のブログで具体例を挙げ、説明した。①抜擢人事で登用した側近や盟友に暴走させ、自らは不作為を装う②「反日は韓国の世論であり、韓国政府には止められない。反日を煽っているのはむしろ右傾…

明智光秀「三日天下」が残した業績 大減税は明治まで続いた

2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は長谷川勝巳さんが演じる明智光秀(?~1582)だ。これまでとは違って、本能寺の変の直前に苦悶する姿だけでなく、光秀の政策、特に民政について描かれるのではないか。 読売新聞オンラインのコラム本文 ↑読者登録…

武田信玄と伊達政宗 戦国の「衆道」

戦国時代の名だたる武将たちにはたくさんの同性愛の記録が残っている。武田信玄(1521〜73)の「衆道」については特に有名だ。自筆の 手紙が残っているからだ。 最近はLGBTについての認識が深まりつつあるが、もともと日本は同性愛に対して寛容な国だった。…

洪水危険、土砂崩れ注意…「地名」は警告する

町の中心部が水没した岡山県真備町 歴史学者、磯田道史さんの『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)を、本棚に戻す前に読みなおすことになるとは思わなかった。大阪北部地震から1か月もたたないうちに、西日本を記録的な豪雨が襲った。被災地はその後…

豊臣家の滅亡を早めた慶長伏見地震

2018年6月18日朝、大阪府の北部を中心とする最大震度6弱の地震があり、大きな被害が出た。被害に遭われた方に心からお見舞い申し上げたい。 この大阪北部地震を受けて書いたコラムでは、豊臣秀吉(1537~98)の天下を早く終わらせ、歴史を変えた大地震と言…

「地震加藤」と呼ばれた清正と熊本城

熊本地震から2年が経つのを機に、かつて赴任していた熊本に行き、熊本城の復興を取材した。その模様は「深層NEWS」でも放送したが、伝えきれなかった熊本城の石垣の構造などを解説した。 読売新聞オンラインのコラム本文 ↑読売新聞オンラインに読者登録せず…

信長と信玄 運命を分けた経済格差

武田信玄と織田信長は戦国時代の両雄として、その民政や用兵についてはよく比較されてきた。経済政策についても比較した本や論文はたくさん出ている。 だが、信長については有名な楽市楽座や関所の廃止、物流拠点の伊勢湊を支配した意味などに着目したものが…

だから光秀はキレた?本能寺の変「珍説」の真相

やり手で知られた女性元衆院議員が元秘書を罵倒した言葉「このハゲーっ!」が2017年の流行語になったが、恒例の「新語・流行語大賞」にはノミネートされなかった。やはり元秘書を罵倒した言葉「ちーがーうーだーろー!」がノミネート30語に入ったが、ネット…