今につながる日本史+α

今につながる日本史+α

読売新聞編集委員  丸山淳一

ブログ書き下ろし

サザン『盆ギリ恋歌』の歌詞にみる「お盆」と「反体制」の考察

デビュー45周年を迎えたサザンオールスターズが、45周年を記念した三部作の配信を始めた。7月17日にリリースされたのがその第一弾が『盆ギリ恋歌』だ。 サザンならでは?「攻めた歌詞」 歌詞が参考にしているのは『五木の子守唄』 故郷のエネルギーを示す歌 …

『どうする家康』で退場の信玄 終焉の地は駒場ではない?

松本潤さんが徳川家康(1542~1616)を演じるNHK大河ドラマ『どうする家康』第19回(5月21日放送)で、阿部寛さんが演じる武田信玄(1521~73)が病死した。ドラマでは信玄終焉の地は「信州(現在の長野県)駒場こまんば」とテロップで紹介されたが、信玄が…

「豊島」園の跡地に「練馬」城址公園が開園…なぜ?

東京都練馬区の遊園地「としまえん」の跡地に東京都が整備を進めていた「練馬城址じょうし公園」が開園した。2020年に閉園した「としまえん」の跡地約27ヘクタールは五つの区画に分けて整備が進められており、今回開園したのは「花のふれあいゾーン」「エン…

2025年大河主人公・蔦屋重三郎の敏腕プロデュース

2025年に放送されるNHK大河ドラマは、江戸時代の出版人、蔦屋つたや重三郎じゃうざぶろう(1750~97)の生涯を描く「べらぼう~蔦重つたじゅう栄華乃夢噺えいがのゆめばなし~」に決まった。主人公の重三郎は横浜流星さんが演じる。 横浜さんは大河ドラマは…

次期朝ドラロケで本堂破損 百済寺の長くて深い歴史

百済寺本堂。慶安3年(1650年)に再建された 近江(滋賀県)琵琶後の東に位置する「湖東三山」のひとつ、釈迦山しゃかさん百済寺ひゃくさいじ(滋賀県東近江市百済寺町)本堂の濡ぬれ縁が破損した。 NHK大阪放送局が制作する次期連続テレビ小説『ブギウギ』の…

天下の大名物「千鳥の香炉」の数奇な来歴

大人買いしている「戦国の茶器」 トイズキャビンのカプセルトイ「戦国の茶器」の大人買いを続けていたら、本棚の一角が変の直前の本能寺みたいなことになってきた。蘭奢待らんじゃたい、三足みつあしノ蛙、平蜘蛛の釜、黄金の茶窯などがそろった。それぞれ深…

退却を進言した家康を置き去りに?「金ヶ崎の退き口」の真実

読売カルチャーセンター公開講座で取り上げた話の中から、時間内で話しきれなかったテーマを再録・補足する第2弾は、元亀元年(1570年)の織田信長(1534~82)による越前(現在の福井県)朝倉攻めについて取り上げる。越前攻めは信長の義弟、浅井長政(154…

三英傑「ホトトギスの歌」を詠んだのは誰か

読売カルチャーセンター錦糸町で「徳川家康はなぜ最後に天下人になれたのか」という題で公開講座を開き、「戦国の三英傑」について話した。織田信長(1534~82)、豊臣秀吉(1537~98)、徳川家康(1542~1616)の性格の違いを話した際に、有名な「ホトトギ…

二宮和也さん主演の映画が後押し シベリア抑留資料の合同展示

シベリア抑留からの最後の引き揚げ港となった京都府舞鶴市の舞鶴引揚記念館と、シベリア抑留の資料を展示・所蔵する東京都新宿区の平和祈念展示資料館の初の合同展示が、2月22日から東京・丸の内で始まった。 合同展示の入口には舞鶴引揚記念館から平(たい…

家康はか弱い白兎か虎の子か…干支に2説

読売新聞オンラインでコラムを書いて5年になった。長い間コラムを書いていると悩ましい問題に突き当たる。取り上げる人物の生没年もそのひとつ。ÑHK大河ドラマで放送中の『どうする家康』主人公の徳川家康(松平竹千代)についても悩ましい問題がある。 家…

いたずらは許されないお盆最後「京都五山の送り火」の伝統とは

8月16日夜、「京都五山送り火」が行われる。お盆(=盂蘭盆会うらぼんえ)」の最終日に精霊を送り出す仏教行事で、祖霊(お精霊さん)を再び浄土(死後の世界)に送る火を灯す。過去2年は新型コロナ感染対策として規模を縮小して実施したが、今年は3年ぶりにすべ…

『麒麟がくる』本能寺のトリガーは家康?は大外れだったが…

織田信長 『麒麟がくる』最終回の本能寺の変については、ドラマの結末を見てからもう一度書く、と前回のコラムに記したが、公表された最終回の粗筋を読んで言っておきたいことができた。本能寺のトリガーは家康暗殺指令になる恐れがあるが、それはないと思う…

『 麒麟がくる』で「三悪」の汚名晴らした松永久秀

NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で、吉田鋼太郎さんが演じる松永久秀(1508〜77)が織田信長(1534~82)に背き、信貴山城で自害した。 松永久秀(『太平記英勇伝』) 天下の大名物といわれた平蜘蛛を抱えて爆死するという俗説を採用しなかったあたりは、最新の…

信長の蘭奢待切り取りの真相は

大河ドラマ『麒麟がくる』(12月20日放送)で、織田信長(1534〜82)が、奈良東大寺の正倉院宝物の中でも特に有名な伽羅きゃら「黄熟香おうじゅくこう」を切り取る。文字の中に「東」「大」「寺」の名を隠した「蘭奢待らんじゃたい」の別名のほうが知られる天…

「今につながる日本史」反響まとめ

読売新聞オンラインで連載したコラムに、このブログの書き下ろしも加えた『今につながる日本史』。ほぼ完売しましたが、Amazonなどのネット通販でもお買い求めいただけます。全国の図書館にも入っています。 本は多くの方に読んでいただき、これまでに多くの…

平家の落人集落発見?100年前の国勢調査

国勢調査が大正9年(1920年)の第1回調査以来、100 年の節目を迎えた。10月7日に回答期限を迎えた今回の調査は新型コロナの影響でインターネットによる回答が推奨されたが、回答率が低く、回答期限が20日まで延期された。 回答しない世帯には調査員が訪れ…

「今につながる日本史」が本になりました!

読売新聞オンラインで連載したコラムに、このブログの書き下ろしも加えた『今につながる日本史』が本になり、5月20日、中央公論新社から発売されました。 2018年から2020年までに読売新聞オンラインに掲載した「今につながる話」のほか、歴史のこぼれ話〈余…

信長も考えた?足利16代将軍・義尋の誕生

乱世は後継者が次々と権力を奪う時代だ。当然、前任者の子孫はその地位を失う。だが、後継者は前任者と敵対していたわけではない。権力の簒奪さんだつには手順が必要になる。 豊臣秀吉(1537〜98)は織田信長(1534〜82)の孫の三法師、のちの織田秀信(1580…

「暴れ川」「ダム」の歴史と令和の熊本豪雨

決壊した球磨川と浸水した人吉市街 梅雨前線の影響で熊本県南部に記録的な大雨が降り、球磨川が氾濫した。支流に近い球磨村の特別養護老人ホームが浸水し、土砂崩れも多発した。 八代市や人吉市では橋が流失し、多くの人が孤立した。死者・行方不明者は30人…

『アルキメデスの大戦』に盛り込まれた史実が示す教訓とは

*「今につながる日本史」の出版にあわせて、本の中身を確認できるように、このコラムは本に収録した加筆修正後の内容に改めました。 護衛艦「いずも」(海上自衛隊ホームページより) 政府は2018年12月に閣議決定した新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画(2…

外出自粛でも楽しめる?安土城 3つの謎

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国に緊急事態宣言が出され、今年のゴールデンウイークはどこにも行かずにSTAY HOMEという人が多かっただろう。 外出を自粛してみると、自由に外出できるというのはいいことだったのだなあと思う。外出して見ることが…

信友と信勝を謀殺、信光も?血塗られた信長の尾張統一

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大河ドラマ「麒麟きりんがくる」の放送が6月14日の放送回から休止するという。面白く観ていただけに残念だが、仕方ない。 ただでさえ東京五輪の間の休止を見越して今年の大河ドラマは短い。それがさらに短くなるのだ…

道三と信長の聖徳寺会見 「麒麟がくる」はどう描いた?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大河ドラマ「麒麟がくる」の収録が中断されているという。 もともと東京オリンピック中の放送休止を見込んで、いつもの年より少ない44話しかなく、沢尻エリカ被告の一件で冒頭10話を急きょ撮り直した。関係者はさぞ大変…

新型コロナ拡大 江戸の虎列刺(コレラ)の教訓生かせ

新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が加速している。2002~03年に大流行し、中国で349人が死亡した重症急性呼吸器症候群(SARS)を大きく上回る拡散で、感染は全世界に広がっている。 最悪の場所とタイミング 鎖国の日本で「虎列刺」流行 箱根で止まった最…

バス「とまります」ボタンは日本独自の文化だった

新型コロナウイルスの感染拡大で公共交通機関の対策が強化されている。乗客にマスク着用や手洗いの励行を求めるアナウンスが流れ、窓開けや車内の消毒も強化されているという。 つり革を手首でひっかけたり、手すりをハンカチを持って握る人もいるようだが、…

「麒麟がくる」に登場 織田信秀の実像とは

「麒麟がくる」は大河ドラマ「国盗り物語」と同じく、織田信長(1534〜82)の義父となる斎藤道三(1494〜1556)がしっかり登場し、本木雅弘さんの“怪演”が話題となっている。高橋克典さん演じる実父の織田信秀(1511〜52)についても丁寧に描かれている。 信…

コロナ感染拡大 の一因 中国の 「春節」と暦の話

新型コロナウイルスが世界に拡大している。1月24日から中国は春節(旧正月)の時期(24日が大晦日にあたる)を迎え、のべ30億人が移動する「世界最大の民族移動」の直前という最悪のタイミングで発生した、ということは別のコラムで記した。 この時期は留学…

南海トラフ地震と津波はいつ来るのか 古文書が示す4法則

政府の地震調査委員会が、南海トラフ地震に伴い今後30年以内に津波に襲われる確率を初めて地域ごとに算出し、その地図を公表した。 静岡や高知、和歌山など10都県71市区町村に高さ3m(メートル)以上の津波が26%以上の「非常に高い」確率で押し寄せるとい…

新発見!信玄の信長宛て書状から読む戦国大名の外交戦

元亀元年(1570)に武田信玄(1521~73)から織田信長(1534~82)に出された書状が見つかった。戦国期の史料を集める一般財団法人「太陽コレクション」が2019年、書画骨董業者を通じて購入したという。 東京都市大准教授の丸島和洋さんと、東京大史料編纂所…

ウナギ絶滅?万葉歌人と江戸の発明家が勧めたワケ

ウナギは99%が養殖物だが、卵から成魚まで完全養殖する技術はまだ確立されていないこと、そのため、養殖といっても稚魚(シラスウナギ)を捕まえて育てるしかなく、稚魚の乱獲が続いていることも、だいぶ知られるようになってきた。日本人とウナギの長い歴…