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読売新聞編集委員  丸山淳一

ゴーン会長の逮捕を〝忠臣蔵〟に重ねて義挙か謀反か考える

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 日産自動車カルロス・ゴーン会長の逮捕には驚いた。どうやら日産内部では、資本提携先のフランス・ルノーとの関係がぎくしゃくしていたようだ。海外からの報道によると、ルノーが日産との経営統合を目論んでいたとか、ゴーン容疑者が日産の西川社長の解任を計画していたということのようだ。

 事件が発覚した時期が、ちょうどあっていたから、というのもあるが、日々の捜査の状況を報じる紙面を読んで、忠臣蔵を思い出した。

読売新聞オンラインのコラム本文

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悪いのはゴーン前会長だけか

 事件の全体像は、まだ分からない。一部の海外メディアは「人質司法」などと書いているが、明らかな誤解もある。検察の捜査結果を待ちたい。

 ただ、どうしても分からないのは、日産の現経営陣の責任はないのか、本当にゴーン容疑者だけが悪いのか、ということだ。ゴーン容疑者だけが自らの報酬を勝手に決めて私腹を肥やしていたとしても、有価証券報告書への記載までひとりでやっていた訳ではないはずだ。司法取引を結んでいたとしても、専横や不正を許した西川社長ら現経営陣の経営責任は免れないのではないか。

 実際に法人としての日産は金融商品取引法の「両罰規定」によって起訴されているから、不正を糾弾する「義挙」だったとはいえない。むしろ経営統合を迫るゴーン容疑者を排除しようとした「謀反」ではないか、と考えたところで、待てよと思った。

そもそも忠臣蔵は義挙なのか

 日本人が最も好む義挙の代表例、忠臣蔵は果たして本当に義挙だったのか。義挙でないとすれば、「日産忠臣蔵」は「日産本能寺の変」に化けるかもしれないと考えたところで、また待てよ、と思った。謀反を起こした側にとっては、謀反は義挙なのだ。このことは、日本史でおそらく最も有名な謀反人であろう明智光秀にもあてはまる。

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東京・高輪の旧熊本藩細川屋敷跡は、赤穂浪士切腹の地とされる

 信長びいきの私は光秀の行為は謀反だと思うが、最近は光秀の再評価が進んでいる。詳しくは光秀を取り上げるコラムで書くつもりだが、再評価をするなら史実の裏付けに沿って冷静にやらないといけない。忠臣蔵の評価でも同じことがいえる。

 むろん、さまざまな形で世代を超えて伝えられてきた忠臣蔵の芝居や小説、ドラマなどを卑下するつもりはない。これらの作品は史実と切り離して、日本人の倫理観を示す見事な筋書きだ。これほど日本人に好まれる理由も、まさにそこにあるのだろう。

 

 

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